| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-279 (Poster presentation)
Parker(1990)は、二次性徴形質が劣る雄ほど強い精子競争にさらされていることから、そのような雄ほど1)精巣への投資(精子数および濃度)が増加すること、2)鞭毛が長く遊泳速度の速い精子を形成すること、3)遊泳速度が上がるように投資するため、精子の寿命が短くなることを理論的に予測した。本研究では、サケ科魚類を用いて、成熟体サイズおよび婚姻色と精子特性との関連性を明らかにすることを目的とした。
北海道南西部に位置する尻別川において1歳魚の成熟オショロコマ雄17尾(平均14.5 ± SD 2.3cm)を捕獲した。捕獲した個体は、ただちに婚姻色を計測するためにデジタルカメラにより撮影を行った。その後、体長および体重を計測し、腹部の圧迫により精液を採取した。採取した精液は、保存液にて100倍に希釈した後、倒立顕微鏡下で精子の活性状況を撮影した。そして、撮影した映像から精子の遊泳速度、寿命ならびに鞭毛の長さを計測した。また、婚姻色の評価は、画像解析ソフトウェアにより色相、彩度、明度を求めた。尚、血球計算盤を用いて精子数を数え、各個体の精子濃度(/μl)を求めた。
本研究では、体サイズと精子濃度の間に有意な負の相関関係が認められた。また、精子の速度に関しては、色相値との間に有意な正の相関、彩度値との間には有意な負の相関関係が認められた。さらには、精子速度が速い精子ほど寿命が短い傾向も認められ、速度と寿命の拮抗関係が示された。以上、本研究の結果は、成熟体サイズが小さく婚姻色が地味な雄ほど、精子の量および質に対して多くのエネルギーを投資していることが示され、Parker(1990)の予測を支持する結果となった。