| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-281 (Poster presentation)

大規模環境改変地周辺におけるオオタカの繁殖状況の推移

山田辰美(富士常大・社会環境),*藤井直紀(富士常大環防研),新井真(日本オオタカ)

平成元年、静岡県のほぼ中央に位置する丘陵地に空港建設が計画された。その後平成8年に事業計画地内においてオオタカの営巣地が確認されたことをきっかけに、大規模な環境改変を伴う建設工事によるオオタカへの影響が大きな問題となった。県ではオオタカ保護対策の検討委員会を設置し、この委員会による提言をもとに保護対策を実施することとした。この提言では、事業地内にある営巣地だけでなく周辺の広範囲に生息する個体の保護、営巣地を保全するための地権者との保全協定の締結、採餌環境の改善のための面的な環境保全など、当時いくつかの先進的な取り組みが提案されている。提言における保全目標は、対象とする約4000haの範囲で「4つがいのオオタカが安定的に繁殖活動を継続できる営巣環境の保全・整備」とされている。

対象範囲のオオタカについて10年以上の調査を継続して実施した。その結果によれば毎年の繁殖成績は4つがいを上回る年もあれば満たない年もあるといったように変動巾は大きいが、工事が始まればオオタカは姿を消してしまうという当初の指摘とは異なるものであった。

また対象範囲内での事例の一つとして、改変地から数十から百数十メートルの場所で営巣・繁殖し、継続してその営巣地を利用しているつがいが存在している。

今回は繁殖成績の推移をもとに、環境改変との関連性について考察を試みることとした。


日本生態学会