| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-458 (Poster presentation)
炭素固定などの生態系機能は,気象など環境要因の変動に依存して年々変動すると考えられる.生態系機能の年々変動を明らかにするには,同一の生態系における長期モニタリングが手法として有効である.本研究は半自然ススキ草原を対象に,葉群動態に基づいて炭素吸収(純一次生産)を,土壌呼吸に基づいて炭素放出をモニタリングし,草原の炭素動態と気象要因の関係を明らかにすることを目的とする.調査対象は,冷温帯域に位置する筑波大学菅平高原実験センター(長野県上田市)の半自然ススキ草原であり,この草原は毎年10月中旬の草刈りによって維持されてきた(刈り取られた地上部は系外に持ち出される).葉群(LAI)動態は自動魚眼デジタルカメラを用いた全天写真解析および葉群内外の光量子測定によって,土壌呼吸は自動開閉チャンバーを用いた通気式赤外線分析法によって,生育期間を通じて測定された.本草原の地上部は,例年,5月下旬に成長を開始し,6月〜7月にかけて急速に成長し,7月下旬〜8月上旬にLAIがピークに達し,8月中旬以降にススキの花穂が出穂,9月以降には順次葉が黄化・枯死し,地上部葉群は衰退する.この地域では例年,冬期には約1 mの積雪があり,3月中旬から下旬に雪融けが始まり,その後1カ月以内に草原の雪はほぼ融け終わる.冬期の積雪量と雪融けの早晩(春期の地温と土壌水分に影響)および雪融け後〜梅雨期〜夏期にかけての日射量・降水量・土壌水分などの環境要因(作用)は葉群動態(成長開始期,最盛期,衰退期)に影響を持ち,また,葉群内の光強度などの環境要因は葉群動態(反作用)によって変動すると考えられる.本発表ではこれまで得られた成果の概要を紹介し,上記手法によるモニタリングの有効性と問題点を検証する.