| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-461 (Poster presentation)
海域で吸収・固定される炭素「ブルーカーボン」について,国連環境計画(UNEP)は浅海域の重要性を主張した.このように浅海域は炭素の重要な吸収源として注目を集めているが,その科学的検証は始まったばかりである.一方,陸域で吸収された炭素の多くは河川を通じて河口域に流入するとされており,浅海域は陸域からの炭素の受け皿としても機能する.栄養塩負荷を受ける河口域は生産性が高く,自生性有機物が供給される場でもある.これら起源の異なる有機物の量的関係や相互作用については不明な点も多い.そこで本研究では,有機物の安定同位体比と元素比を指標として,河口域に存在する様々な起源の有機物動態を検証した.
研究対象となる北海道風蓮湖には多くの河川が流入し,流域は大酪農地帯となっている.湖面積の67 %は海草藻場であり,また酪農由来の栄養塩流入で富栄養化している.風蓮湖には起源の異なる有機物が供給されていることが予想され,有機物動態の研究に適した水域である.本研究では湖で生産される現地性有機物と系外から供給される異地性有機物を定量的に評価するため,風蓮湖とその流入河川において横断的にデータを収集した.河川上流から湖口までの各地点でPOM,DOMの濃度・元素比とPOMの安定同位体比を測定した.その結果,系外からの流入に加えて,湖内の植物プランクトン生産がPOM,DOMの供給に大きく寄与することが示された.湖内のDIN減少量とON増加量には相関があり,陸起源DINがON生産を支えていることが示唆された.一方,C,Pにはそのような傾向はなく,河川以外の無機態供給が湖内生産に影響すると考えられた.また安定同位体比を用いたPOMの起源推定では,塩分10-25の地点では49-91 %が現地性POMと推定された.陸起源POMは湖奥では60 %を占めたが,塩分20を境に急に濃度低下することが示唆された.