| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-469 (Poster presentation)
樹木は、種によって機能形質が異なり、これは生存・成長戦略の種間差として解釈されている。葉や細根に関する形質は枯死後も引き継がれ、樹種効果がリター分解プロセスに多大な影響を及ぼすことが知られている。最近、各器官間の形質の関連性に注目が集まり、生存期における細根と葉は、養分濃度や形態指標等において正の相関をもつことが示されてきた。しかし、この細根と葉の形質関連性が枯死後に引き継がれるかどうか、つまり枯死細根と落葉の分解特性に同調的な樹種効果がみられるかどうかに関しては、研究例が少なく、未だ一貫した見解は得られていない。リター分解プロセスは物質循環を駆動し、その場所の植生決定に関与するので、器官を超えて種が分解プロセスに及ぼす影響を調べることは重要である。
発表者らは、温帯林の代表的6樹種(落葉樹:コナラ・コシアブラ・ネジキ、常緑樹:アラカシ・ソヨゴ・ヒノキ)を用いて、細根と葉の分解プロセスを比較した。400日間以上にわたるリターバッグ実験を行い、各々の分解速度と分解に関与しうる初期形質(N, P, K, Ca, リグニン等の濃度, 形態指標)を測定した。
結果、樹種間において細根と葉の分解速度に有意な正の相関が認められ、細根と葉の分解特性に同調的な樹種効果があることが明らかとなった。しかし、細根と葉の分解速度決定要因は異なり、器官の違いを超えて分解を制御する形質は検出されなかった。このことから、細根は枯死後、落葉分解における樹種効果を増幅する形で物質循環に影響を及ぼすが、細根と葉の分解メカニズムは異なり、養分濃度や形態指標のみでは分解プロセスを説明できないことが示された。本発表では類似する先行研究のデータを合わせてメタ解析を行った結果についても紹介する。