| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-470 (Poster presentation)
産業革命以降、化石燃料の消費に伴うイオウ(S)化合物の発生量は増大し、全球における人為起源のS発生量は天然起源にほぼ匹敵するといわれている。地域で見ると、経済成長が著しいアジア圏が、世界の主要なS発生源となってきている。日本では公害対策基本法の制定後、人為S発生量は大幅に減少し、1980年代以降から現在までほぼ落ち着いている。しかし環境省・酸性雨長期モニタリング報告書(H21)では、我が国では依然として酸性雨が観測され、岐阜県山県市伊自良湖集水域では過去に大気から沈着し、土壌に蓄積されたと考えられるイオウが渓流に流出している可能性が指摘されている。そこで本研究では、伊自良湖集水域の森林土壌の酸性化指標を中心とする化学性とS化合物含量を測定し、発表者らがこれまで調査した関東~中部地方の森林土壌と比べその特徴を抽出した結果を報告する。
関東~中部地方の岩石性土壌の全S含量は1000mgSkg-1未満であったが、伊自良湖集水域土壌はこの範囲を超える試料が複数存在した。吸着態SO4含量はSO4吸着体である遊離酸化物量(酸性シュウ酸塩抽出態Al含量+1/2Fe含量)に比例し、その勾配は既往の変動幅の上限に相当した。SO4吸着は土壌の酸緩衝機能の1つであるが、伊自良集水域土壌はSO4吸着量が多い試料も土壌pHが既往の変動幅の下限に相当した。伊自良湖集水域土壌の交換性塩塩基含量は既往の値より低く、交換性Al含量は高かった。これらの結果から、伊自良集水域土壌は関東~中部地方の岩石性土壌の中では酸性度が高めの土壌に属し、またS蓄積による酸緩衝作用が強く機能していると推察された。