| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-473 (Poster presentation)
壮齢ヒノキ人工林においては,林床被覆(下層植生,堆積有機物)率の低下により,表土流亡が発生する危険性が指摘されている。本研究では,地表面保護の面からみた林床被覆の樹種差を把握することを目的に,岐阜県高山市清見町(標高1,000m)の同一立地条件下にある壮齢スギ,ヒノキ,カラマツ人工林において主林木,低木(H>2m),林床植生(H≦2m)および堆積有機物の量と内容を評価した。
調査地の土壌型はカラマツ林とスギ林で適潤性淡黒色土,ヒノキ林で適潤性褐色森林土(偏乾亜型)であった。夏期に測定した林内の相対散乱光強度はカラマツ林で大きかった。主林木の立木密度はスギで高く,カラマツで低かった。スギの胸高断面積合計(71.1m2/ha)は,ヒノキやカラマツ(33.6~35.1m2/ha)のそれよりも大きかった。カラマツ林の低木にはウワミズザクラやホオノキなどの高木性樹種が含まれ,胸高断面積合計(2.41m2/ha)は,その他の樹種よりも8~17倍多かった。スギ,カラマツ林の林床はシナノザサが優占し,林床植生や堆積有機物の現存量は,ヒノキ林のそれらよりも多かった。
カラマツ林では,良好な光環境によって低木や林床植生が階層的に維持され,堆積有機物や鉱質土壌の保全(表土流亡の抑止)につながっていると考えられた。スギ林では,低木の量は少ないが,下層植生が多く,堆積有機物中の落葉落枝サイズが大きいため,堆積有機物が流亡しにくいと推測された。一方,ヒノキ林では,堆積有機物が分解されにくい乾性土壌であるにもかかわらず,その量が少なく林床植生も少なかった。ヒノキ落葉には地表面被覆効果はないため,地表面保護の観点からは林床植生の維持が重要である。林床植生の維持には林床の光環境確保が必要であり,そのために効果的な間伐方法(伐採率や間伐間隔)について検討する必要がある。