| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-474 (Poster presentation)

冷温帯林におけるブナ・ミズナラの粗大有機物分解

*上村真由子,伊藤洋務,結城リサ(日大生物)

森林における分解過程の定量的な解明のためには、有機物の分解速度とそれに影響を与える要因との関係を広く明らかにしなければならない。その一つとして、分解初期における菌の進入速度やそれに伴う無機化速度の変化と、樹種、サイズといった基質要因、温度や含水比といった環境要因の影響を明らかにすることが重要となる。分解初期には、有機物に易分解性炭素が含まれるため分解が速いことが知られている。しかし、幹や枝のように表面から内部に向けて立体構造が発達したものでは、菌の進入速度が無機化速度に影響を与える可能性が高い。このような仮説のもとに本研究では、分解実験開始直後のブナ・ミズナラの幹・枝について無期化に伴うCO2の放出速度(呼吸速度)を測定することで、無機化速度と要因との関係を明らかにした。群馬県利根郡みなかみ町の日本大学水上演習林において,ブナ・ミズナラの幹・枝の呼吸速度を測定した.2008年に両樹種を5本ずつ伐倒し、幹と枝の分解実験を開始した。幹は2009年秋から、枝は2010年春から、月に1回の頻度で呼吸速度を測定した。呼吸測定には,アクリル製のチャンバーに赤外線ガスアナライザーを組み込み測定した。環境要因として,気温や材温度、地温、土壌と材の含水率を測定した。各有機物サンプルの含水比は生重や乾重の測定により求めた。幹の分解呼吸測定から、伐倒後2年目は樹種差が小さいこと、3、4年目にはブナの分解呼吸がミズナラよりも高いことが明らかになった。温度―呼吸速度関係から、ブナ・ミズナラともに年数が経つにつれて、等温度下での呼吸速度が増加することがわかり、粗大有機物の分解初期にOlsonの指数モデルを適用することが難しいことが明らかになった。枝は幹よりも分解の進行が早かった。これらのことから、樹種による質の違いや、サイズの違いが菌の進入に影響を及ぼし、無期化速度が変化すると考えられた。


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