| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-475 (Poster presentation)

ボルネオ島の土地利用変化が生態系の炭素収支に与える影響評価

*安立美奈子, 伊藤昭彦(国環研), 竹内渉(東大),山形与志樹(国環研)

人為的な炭素排出のうち約2割は土地利用変化によるものと言われ、特に熱帯林の森林減少や劣化防止によるCO2排出削減効果 (REDD+)の評価が急務の課題となっている。熱帯林の多くは、正味の森林面積や伐採面積が不明なままであるが、最近の衛星データを解析した研究により森林伐採による炭素放出量は非常に大きいと言われている。南米アマゾンでは欧米の研究者を中心に野外観測やデータ解析研究が進んでいるが、東南アジアにおいては観測やモデル研究事例が少なく、熱帯林の炭素収支の推定は誤差が大きい。本研究では、2002年から2008年のボルネオ島におけるMODISの衛星画像を用いて、森林・非森林の年々変動から森林伐採面積および農地面積を1kmメッシュで算出した。農地はすべてアブラヤシプランテーションであると仮定した。この結果と、陸域生態系モデルVISITを用いてボルネオ島全体の炭素収支を算出した。土地利用変化を考慮しない場合(ボルネオ島のほぼ全体が常緑広葉樹林)の炭素収支との比較を行い、土地利用変化がボルネオ島の炭素収支に与える影響評価を行った。

土地利用変化を考慮しない場合の炭素収支は、考慮した場合に比べて、総一次生産量(GPP)やバイオマス量、土壌呼吸量などは1割から2割の過大評価となることが示された。また、高温多雨であった1986年と、低温少雨であった1999年におけるボルネオ島のGPPの平均値の差は、3.01tC ha-1 であったのに対し、2003年から2008年において土地利用変化を考慮した場合と考慮しなかった場合のGPPの差は3.33—5.15 tC ha-1 であり、気候変動よりも土地利用変化の方が炭素収支に影響することが示唆された。この結果から、温暖化緩和の観点から土地利用管理の重要性が示された。


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