| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-477 (Poster presentation)

観測およびモデルを用いた北海道の森林炭素収支に対する攪乱の影響評価

*平田竜一, 伊藤昭彦, 三枝信子

陸域生態系プロセスモデルを用いて炭素収支を推定する際、一般に平衡状態すなわちNEP(Net ecosystem production)が長期的にゼロとなる状態を想定するため、1000〜2000年といった高い林齢を仮定する。しかし、実際の森林生態系は間伐・伐採・植林等の森林施業による人為的撹乱や火災・台風等の自然撹乱の影響を大きく受けるため、平衡状態を仮定できないことが多い。日本では森林の45%が40年生以下、70%が60年生以下の樹木が占めており、撹乱(林齢)を無視することはできない。これまでの陸域生態系プロセスモデルの研究でも撹乱を考慮しなければ観測された炭素収支を正しく評価できないことが多数報告されている。本研究では撹乱の影響を評価するため、北海道大学天塩研究林のサイトを対象として、針広混交林を10年おきに伐採し、再成長させるシミュレーションを行った。伐採前は平衡状態であったと仮定して、Spin upは2000年とした。1940年から10年おきに伐採・再成長を行う場合と伐採しない場合とを比較する数値実験を行った。撹乱を行わない場合、NEPは-0.5〜1.8 tC/ha/yで推移した。伐採を行うとその直後は-4 tC/ha/yと大きな量の炭素を放出したが、次第にNEPは増加し、約13年でゼロにまで回復した。その後もNEPは緩やかに増加するが、30年ほど経つと2.5〜3.0 tC/ha/yでほぼ一定の推移をするようになった。2010年のNEPを見ると、伐採を行わない森林は0.6 tC/ha/y、10年生の森林は-0.7 tC/ha/y、20年生は1.6 tC/ha/y、30〜70年生は2.0〜2.5 tC/ha/yで非常に近い値を示した。実際の天塩サイトは伐採後にカラマツ林が植林されたが、伐採後10年でNEPはゼロ近くまで回復しており、シミュレーションはこれと近い傾向を示した。


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