| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-482 (Poster presentation)

谷津干潟に飛来する水鳥による栄養塩輸送量

*中村雅子,矢部 徹(国環研),芝原 達也((社) UMS),有田康一(国環研),石井裕一(都環研),相崎守弘(島根大),林誠二(国環研)

干潟は水鳥にとって非常に重要な生息地であり、繁殖・休息・ネグラ・採食等に利用されている。また、干潟は潮汐により様々な環境を創出するため、生物多様性の高い場所、物質循環が盛んに行われる場所として評価されている。干潟生態系の食物網の上位消費者と言われる水鳥の飛来数について、長期間のモニタリングが行われてきたが、水鳥と干潟環境を関連づけた研究は少なく、干潟の物質循環において水鳥はどのような役割を持っているのか明らかにされていない。そこで、生産者の基本栄養源となる栄養塩について、水鳥の行動を考慮した栄養塩輸送量を季節別や年別に算出し、干潟の物質循環において、水鳥がどのような役割を持っているのか明らかにすることを目的とした。

本研究では、千葉県習志野市に位置する谷津干潟において見積りを行った。谷津干潟は、東京湾の広大な干潟の一部であった場所の周囲が埋め立てられ、住宅地と道路に囲まれた長方形の干潟である。面積は約40 ha、東京湾とは2本の水路でつながっている。カモ類・サギ類・シギ類・チドリ類・カモメ類が多数飛来することから、1993年にラムサール条約に登録された。

水鳥の栄養塩輸送量について、水鳥が採食場として利用していれば干潟からの持ち出し、ネグラ・休息として利用していれば干潟への持ち込みと定義し、観察をもとに種ごとにグループに分けた。また、栄養塩量の基本単位について、基礎代謝量、排泄物および体重の関係性から体重を原単位とした。

ここ20年で最も飛来数が変化しているシギ類・チドリ類の窒素持ち出し量について、20年前に比較し、現在は半分量以下に減少していることがわかった。発表では、残りの種類について、持ち出し量および持ち込み量を見積り、両者を合わせ谷津干潟全体について考察する。


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