| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-489 (Poster presentation)
島根県の広葉樹林の下層にはしばしばチュウゴクザサが密生して繁茂する。落葉広葉樹の下層に繁茂するササ類が林木の更新を阻害することはよく知られているが、立地の物質動態への影響についての研究は少ない。本研究では、下層に繁茂するチュウゴクザサを刈払い、土壌の窒素動態と土壌水の養分濃度の変化を測定することで、立地の物質動態への影響を考察した。
島根大学三瓶演習林内の落葉広葉樹二次林にて、斜面中腹および下部に5×5mの調査区を設置し、6月に下層のササを刈払った。また、隣接する場所に対照区を設けた。土壌の深さ30cmにポーラスカップを設置し、土壌水を毎月採取し、イオンクロマトグラフにて各種イオン濃度を測定した。また、隔月で表層土壌を採取し、土壌の無機態窒素濃度および窒素無機化速度をもとめた。
土壌水のイオン濃度は、刈払区においてK濃度の上昇がみとめられた。チュウゴクザサは生育期にK・Mg・Caの含有量が増加することが報告されており、刈払区の土壌水質にはこれらの養分の吸収が抑制された影響があることが考えられる。斜面中腹の調査区ではササの刈払いによって土壌の窒素無機化速度の低下が認められたが、斜面下部では刈払いの効果は認められなかった。チュウゴクザサによる森林土壌の窒素動態への影響の大きさは地形に依存していることが考えられた。