| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-493 (Poster presentation)

短伐期早生樹林業の施業方法の違いによる炭素貯留量の推定

*金子隆之,太田誠一(京大院農),Hardjono Arisman(MHP)

インドネシアではパルプ供給用のAcacia mangiumなどの産業植林地が拡大しており、その炭素吸収源としての機能の発揮も期待されている。土壌中の養分量が少ない熱帯土壌における早生樹林業では短いサイクルで伐採が繰り返され、生産物持ち出しや収穫時の裸地化によって、伐採残渣物や土壌有機物の分解が促され土壌中の炭素蓄積量や養分量が低下し、林地が劣化する畏れがある。施業方法によって変化する炭素貯留量の将来予測のために、収穫周期、収穫残渣の有無、下刈りの強度などのオプションを変えて、植栽ローテーションの回数を増やした場合の経年変化量をシミュレーションにより推定を行った。

調査はインドネシアスマトラ島南スマトラ州のMHP社所有A. mangium産業植林地で行った。前植生が8年生アカシアであるセカンドローテーションのアカシア植栽地内に隣接して下刈り強度の異なる2つの調査区を設定し、植栽時からバイオマス、下層植生、収穫残渣、土壌有機物の現存量の変化を経時的に測定し4年間の測定データを得た。炭素貯留量を植栽木、下層植生、ネクロマス、収穫残渣、土壌炭素の5つの構成要素毎に推定し、経年変化のシミュレーションにより炭素貯留量の変化を推定した。

8年のローテーションサイクルでの施業を行った場合、地上部と地下部の木質樹木遺体と収穫残渣を起源に持つ20〜37 MgC/ha程度の炭素量が維持されると推定された。しかし、近年行われるようになった6年のローテーションの場合、有機物の蓄積は半分程度しか維持されなくなる。また下刈りを減らすことで土壌炭素とバイオマス量が増加し、収穫残渣の除去により減少することが推定された。


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