| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-HS13 (Poster presentation)
擬態する種の中には体に物を付けて擬態するものもいる。その中でもコヤガ亜科の一部の幼虫は餌である地衣類を材料として擬態する。だが、コヤガ亜科の幼虫は擬態用の地衣製衣を餌としても利用できるのか、またその利用の仕方が種によって異なるのかは不明である。コヤガ亜科の2種(シラホシコヤガ、ミジンベニコヤガ)についてそれぞれ、衣を取った個体と衣を付けたままの個体を用意し、どちらも餌なしの環境で経過を観察した。結果、両種とも衣の有無に関わらず(衣ありは衣を食べずに)全個体が死亡し、実験に用いた幼虫2種は衣を餌として利用できないことが判明した(非常食ではなかった)。またシラホシでは衣ありは衣なしに比べ4日ほど長生きしたため、シラホシの衣には外気から身を守る機能があると考えられる(迷彩服だけでなく、防寒着の機能もあった)。加えて、シラホシでは衣なしが衣ありから衣を奪い取るという追いはぎ行動が見られたため、シラホシにとって衣は生きる上で必要不可欠であると予想される。ミジンベニでは衣ありと衣なしで生存日数に有意な差はなく、追いはぎ行動も見られず、衣は擬態のみを目的としたものと考えられる(迷彩服の機能のみ)。