| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-01 (Oral presentation)
野生動物による農業被害は深刻化し続けている。野生動物被害のうち、シカ・イノシシによるものがもっとも多く、被害額ベースではおよそ3分の2を2獣種で占めている。シカ・イノシシによる農業被害を抑えるために効率的な捕獲方法の開発が求められている。餌付けわなは、比較的難易度が低く、捕獲経験に乏しい人でも取り組みやすいという利点がある。しかし、餌付けわなの捕獲効率は、季節により大きく変動すること、およびある程度変動パターンがあることが経験的に知られている。そこで、本研究では、季節ごとの捕獲しやすさを予測し、効率のよい時期に捕獲努力を集中させることにより捕獲効率をアップさせることを目的とする。
用いたデータは、2007年度から2009年度に兵庫県豊岡市で有害駆除により捕獲されたシカ・イノシシの捕獲日・捕獲頭数、および2009年度から2011年度に長崎県で有害捕獲されたイノシシの捕獲日・捕獲頭数である。まず、前週までの捕獲データを用いて、3つの指標(季節指標、年指標、増減傾向)を算出した。次に、前週の捕獲数と上記3つの指標を説明変数に、当該週の捕獲数を目的変数にして、非線形回帰により捕獲数の予測モデルを構築した。最後に、予測モデルと当該週の指標を用いて翌週の捕獲数の予測を行い、実際の捕獲数によって検証した。
その結果、獣種・捕獲場所に関わらず、前週までの捕獲情報を利用できれば、週あたりの捕獲数の予測は、市町単位で二年目から比較的高い精度で可能であることがわかった。ただし、1年前や4週間前までの捕獲情報しか得られない場合は、予測精度は著しく下がった。市町単位の捕獲数/週の予測を行うためには、前週までの有害捕獲データを分析可能な形で取り込むためのシステムが必須である。