| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-04 (Oral presentation)
都市近郊林において、二次的自然の再生を意図した皆伐更新の再開、レクリエーション利用や隣接住宅への配慮のための抜き伐りなど、様々な目的で上層木管理が行われている。これら現代的な森林管理では、旧来の燃料や用材の利用とは目的が異なるため手法も様々であり、天然更新を目的として下層木を残し上層木だけを伐採する管理もある。上層木を伐採する場合、下層木への影響が避けられない。しかし、伐採による下層木への影響の研究は人工林の複層林施業に関して行われているが、都市近郊林の現代的管理に対応する知見は乏しい。本研究は、都市近郊林の現代的な管理を想定し、上層木の小面積皆伐を行った場合、支障木としての除去や誤伐による計画にない伐採、および巻き込まれなどによる損傷などが、実際にどのくらい起きるのか検討を行った。
試験は10m四方の小面積皆伐区を10か所設定し、樹高2m以上の木本304個体に対して、樹高8m以上の101個体の伐採を行う計画をした(計画伐採木)。実際に施業を行ったところ、計画伐採木を伐る作業の支障や過誤により、46個体が計画外で伐採された(計画外伐採木)。また、これらの他に伐倒の際の巻添え等により34個体が損傷していた(損傷木)。このうち計画外伐採木5個体、損傷木9個体は枯死した。計画外伐採では萌芽再生により41個体は生存していたが、大半の37個体は樹高は2m未満のクラスに落ちた。
この伐採作業は日常的に森林管理に携わっている現業職員によって行われたが、それでも計画外伐採木と損傷木をあわせた個体数は、計画伐採木とほぼ同数あった。このことから、森林管理に対する経験の乏しい市民や造園業者等による管理では、さらに計画外伐採木や損傷木が多くなる可能性も考えられ、都市近郊林において上層木管理を考える場合は留意する必要がある。