| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) B2-09 (Oral presentation)
既存情報から保全上重要な地域のスクリーニングを可能にする取組みは、国土管理や都市計画、保護区の設定、環境アセスメントの効率化・重点化など、様々な目的に利用できる。また、平成25年4月には、改正環境影響評価法(23年改正)が完全施行となり、道路や鉄道、ダム、発電所などの“事業の計画段階”で、事業の位置や規模等について“環境保全に配慮した”検討を行い、配慮書として公表、広く意見を聞くという手続きが規定された。これにより、生物多様性や希少種の保全上重要な地域を回避するような計画手法(例:道路の計画段階で複数のルート案を比較・検討し、より環境に配慮した案を採用すること)が可能となった。
今回の研究成果は、第一に行政組織等での活用を想定しており、生態学を専門としない人々にもわかりやすい情報として提示する必要がある。生息適地モデルは、生物種の分布情報と環境要因との関係を統計的手法で予測し、ある場所での種の生息可能性(ポテンシャル)を定量的に把握する手法である。これをGIS(地理情報システム)と統合することで、希少種などの保全上重要な地域を地図として視覚的に示すことができ、正確な判断や意思決定を行う上で有用なツールとなりうる。
そこで、全国規模で生物多様性や希少種の保全上重要な地域を複数の空間スケールで定量的に予測・把握する手法の開発を目指すこととした。本研究では全国に散在するアンブレラ種(希少猛禽類)の調査結果を収集し、GLMやMaxEnt(最大エントロピー法)、ランダムフォレスト等を用い、全国・地方・地域(事業)の3階層で予測の精度、汎用性、頑健性の検証を行っている。
今回は、これまでに明らかになった結果と課題、今後の展望について紹介する。