| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) B2-10 (Oral presentation)

世界の木材貿易・消費の生物多様性フットプリント

*古川拓哉(森林総研),角谷拓,石濱史子(国環研),加用千裕(農工大),T. Kastner(Univ. Klagenfurt),本藤裕樹,松田裕之,金子信博(横浜国大)

世界的な生物多様性減少が危ぶまれる中、その原因の一つである私たちの資源消費活動が及ぼす影響を評価する必要がある。そこで、森林生態系を対象に木材消費の生物多様性への影響を推定することを目的として、高解像度データに基づく空間明示的な生物多様性フットプリント指標(BF)を考案し、他の指標との比較を行った。また、貿易解析結果をもとに、各国の木材の輸出入による影響を推定した。

まず、2000〜2005年の統計値をもとに、主な木材製品(家具と燃料材を除く)の各国の生産量を森林面積に換算し、森林フットプリント(FF;面積ベースの森林負荷指標)を推定した。次に、既存手法に基づく国レベルのBFと新たに開発した空間明示的なBFを推定した。まず、森林伐採に脅かされる哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類の絶滅危惧種について、各国の在・不在情報をまとめ、FFを負荷として与えることで絶滅危惧種数に基づく国レベルのBFを推定した。また、同じ絶滅危惧種の分布データと世界の森林消失の分布データを用いて、国・地域内の生物分布や伐採量の違いを考慮した、空間明示的なBFを推定した。

その上で、木材貿易解析結果をもとに、各フットプリント指標について、生産国と最終消費国の関係を分析した。その結果、FFでは、米国、中国、日本が、特に寒帯林を持つカナダや北欧、ロシアへ与える負荷が大きいと推定されたが、両BFでは、中国と日本がインドネシアなど熱帯諸国へ与える負荷が非常に大きいと推定された。二つのBF指標の比較では、分布データにもとづいた場合の方が、局所的なホットスポットでの森林伐採が著しいブラジルや豪州で発生するインパクトが相対的に上昇したことから、高解像度データによる解析の重要性が示唆された。


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