| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) C1-14 (Oral presentation)
生物分布と景観構造の関係を統計的に推定した生息地評価モデルは、開発の影響予測など、対象種の生息地保全の手段として重要な役割を担ってきた。このモデルをもちいた保全研究や活動は、推定した地域での生物と景観の関係が他地域にも当てはまることを前提とするものがほとんどである。しかし、広域分布する生物、とくに高次捕食者では、この前提が満たされない可能性がある。地域によって、生息地分断化など環境改変のレベルが違うことが多いだけでなく、餌生物相も違う可能性も高い。
本研究では、里山の高次捕食者であるサシバに注目し、生息地評価モデルの地域間の転用可能性を調べた。そのため、国内のサシバ分布域の北端、中心、西端に位置する4地域それぞれ 25 - 100km2 の繁殖分布を解析した。解析では、差が生じやすい地域の組合せを複数想定し、a. 地域を説明変数に含まないモデル、b. 地域を主効果として含むモデル、c. 地域と景観構造の交互作用項も含むモデルの説明力を比較した。
その結果、地域間で共通して、サシバの生息確率が林縁長や広葉樹林面積と正の関係にあることがわかった。一方、分布北限の岩手で生息確率が低いこと、また、広葉樹林との関係が、分布中心南部や分布西端で強くなる傾向も見られた。発表では、これらの結果をもとに、サシバの生息適地に地理的差異が生じる機構を議論するとともに、景観構造にもとづく生息地評価モデルの地域間転用の限界と可能性を整理する。