| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C1-15 (Oral presentation)

ツンドラ地帯をシミュレーションで再現する:温暖化シナリオ下における水鳥繁殖地の変化予測に向けて

*荒木田葉月(理研・計算科学),伊勢武史(兵庫県立大・シミュ),森健介(Univ. of Calgary, Dept. Geomatics Engineering)

シギ・チドリ類やガン・カモ・ハクチョウ類などの水鳥の多くは、北極周辺で繁殖する。しかしながら、近年の温暖化による北方林の北進や、気温・降水量・積雪などの気候変動により、これらの繁殖地は大きな影響を受けるものと考えられる。温暖化シナリオ下における繁殖環境の変化を明らかにすることは、繁殖地保全を進める上で不可欠である。気候変動については、IPCCによる気候予測が整備されているが、それにともなうタイガ/ツンドラの植生遷移については不確実性が高いのが現状である。そこで我々は、動的植生モデルSEIB-DGVMを用い、北極陸域における植生遷移の再現を目指した研究を行っている。そのための第一歩として、現在の植生を的確に再現できるモデルの構築に取り組んでいる。それでは、現在の実際の植生分布とシミュレーションモデルの結果を整合させるためにはどうしたらよいか。これまで、生態学の分野では、モデル開発者の主観的な試行錯誤により、モデルの初期値やパラメータの調整が行われてきた。一方、調整すべきパラメータや変数の数が非常に多い気象学の分野では、これらの調整を自動的に行う「データ同化」という手法が開発、実用されてきた。我々は、この「データ同化」手法を生態学のモデルに適用する取り組みを始めている。今回の発表では、フライウェイ・サイトとして有名なレナ川河口とその周辺において、植生動態モデルによるシミュレーションを行い、観測データと比較することで、モデルの再現性を検証する。このようなシミュレーションと実測データの比較は、データ同化に取り組む際の第一歩となる。


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