| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-01 (Oral presentation)

北海道の雷電山(蘭越町・岩内町)で発見したブナの分布北限

*田中信行(森林総研・北海道),井関智裕(東京植生研究会),松井哲哉(森林総研・植物生態)

ブナ林の分布予測モデルによると、環境条件から推定されるブナ林の潜在生育域は、現在の分布北限を超えて北に広がっていることが示唆されている(Matui et al. 2004)。ブナの北限は、これまで北海道の黒松内低地とその北東側に連なる幌別岳・幌内山であるとされてきた。しかし、2010年に黒松内低地帯から東に10km、太平洋から2.5kmの豊浦町礼文華峠で39本の個体群が発見された(松井ほか2012)。これは北海道のブナの東限になる。

2013年10月の調査において、幌別山のさらに北側の雷電山の中腹で直径5cm~50cmのブナ10本を確認した。分布地は緩やかな尾根でアカエゾマツ・ダケカンバが優占する老齢天然林であった。ブナ個体の位置がばらばらで、個体サイズもまちまちであり、天然更新由来の個体群と推定される。少ないながら結実がみられ、林床にはブナの稚樹も確認した。

これまでの分布情報によると、黒松内まではブナ林が広く分布するが、そこから北では、小さな個体群が離れて分布する。このようなことから、ブナの北限以北の分布拡大は、黒松内町以南のブナ優占林から離れた場所に種子の鳥散布により新たな個体群が定着し、この小個体群を種子源として近隣にブナが増殖するプロセスが各所で進行していると推定される。北限以北の山地の植物調査は不十分で、今後の詳細な現地調査によって、このようなブナ優占地域から飛び離れた小個体群がさらに発見されると考えられる。


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