| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) C2-02 (Oral presentation)
「縞枯れ」林は、恒常的な風による撹乱とその後の更新が繰り返されることで維持されている森林であり、常に小規模な撹乱の反復によって森林構造の平衡が維持される典型例として考えられてきた。しかし、縞枯れ林として最も有名な北八ヶ岳縞枯山は、1959年の伊勢湾台風によって大規模な風倒があり、考えられているほど平衡状態にはないと推察された。本研究は縞枯山縞枯れ林の58年間の森林構造の動態を解析した。
1954、1987、2002年に諏訪営林署(現南信森林管理署)が縞枯山縞枯れ林の530mの調査トランゼクトに沿って10mおきに毎木調査(4-100㎡の標準調査区)を実施した。著者はこのトランゼクトに沿って2012年に再調査を実施した。各調査区の林齢は1959年の樹幹解析結果および空中写真から推定した。
伊勢湾台風前1954年の縞枯れ林の現存量は102t/haだったが、台風から28年後の1987年は39t/haだった。2012年は60t/haだった。調査区単位の齢級分布は1959年には0齢から約100齢までほぼ一様だったが、伊勢湾台風後は半数近くの調査区が台風直後に成立した齢級に集中し、2012年の最高の林齢も65齢であった。1954年には林冠高が10mを越す林分が多くあったが、1987年には多くが5m以下で、10mを越す林分はごく一部だった。その後、全体として樹高は増加したが、高樹高林分の枯死が進み、2012年には10m以上の林分はなく、成熟林の樹高はほぼ7m程度であった。
以上より、縞枯山の縞枯れ林は伊勢湾台風の前後で森林構造が大きく異なるだけではなく、1987年以降も最大樹高が減少し続ける状態であった。つまり現在の縞枯れ林は平衡状態とは言えず、50年前の大規模撹乱の影響を強く受けていた。