| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-03 (Oral presentation)

モンゴル北部森林火災跡再生困難地での「倒木遮蔽更新」仮説の検証

草加 伸吾(琵琶湖博物館)

モンゴル北部フブスグル湖流域には純林といっていいほどシベリアカラマツが優先する。高緯度(50°N)、高地(1600m以上)のため、樹木の種多様性が低く、年降水量が300mm前後と少なく、凍土と共存した森林である。社会体制が変わった30年程前から頻発する山火事跡地の再生が非常に悪いことから、その再生を促進するために、この森林の更新機構と再生阻害要因を、森林調査と野外実験で調べている。この地の森林は凍土と結びついた森林で、樹冠火災を受けると凍土の位置が下がり、地表の乾燥化が進み、再生が困難となる。

森林内や林縁に樹木の直線列が見られることから、倒木の陰に実生の定着立地が生じ、更新するという『倒木遮蔽更新』仮説を着想(2006 新潟生態学会発表)した。それを検証するために、東西方向に倒した焼失木を使って、焼け跡での再生阻害要因実験を行った。その結果、光による乾燥害、種子の供給不足、リターによる発芽定着阻害が顕著に見られ、倒木の北側に熊手をかけて播種した実験区が最も実生が多く生えた。

さらに、湖西のハロス、湖東部ヘクツアル、及び湖南部のハトガルで広く、自然状態での倒木とその周囲の実生・稚樹生育調査を、異なる光環境下で行った。その結果、自然に起きた倒木遮蔽更新例が、焼失地の草原や明るい森林内で数多く見られ、数メートル程に育った再生木が倒木の陰側だけに10本以上再生している実例データを数多くとることができた。これは、倒木陰に再生した稚樹の一部は自然状態で亜高木にまで育つことの証明となる。再生阻害要因実験での結果や自然の再生例などの観察、発芽率などから、『倒木遮蔽更新仮説』を応用した森林再生促進のためのマニュアルを作成した。

本研究はJSPS科研費 23405030の助成を受けたものです。


日本生態学会