| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) C2-10 (Oral presentation)
樹木の幹の直径成長は木材生産の観点からきわめて重要であるので、古くから着目されてきた。近年は森林の動態という観点から、個体サイズと直径成長の関係が注目されている。Enquist (1999)は、個体重の成長が個体葉量に比例すると仮定し、個体重と葉重のアロメトリーおよび、胸高直径と個体重のアロメトリーから、「期首における直径の2/3乗と期末における直径の2/3乗とは直線関係」という予測を導いた。演者はこの予測を北海道の落葉広葉樹二次林で検証し、この予測が成立するように見えるのは自己相関に基づくアーティファクトであり、「一般的に成立するものではない」ことを示す。成立しないのは、自己被陰があるため個体生産量は葉量に比例しないこと、生産量がすべて幹直径の成長量とならないことなどによるものである。これに代わる予測式として、Hozumiら(1968)による個体重頻度分布の式から導いた予測式を検証し、Enquist予測が成立しない例をも記述できることを示す。しかしこの場合も、期末直径=期首直径+成長量であることに基づく自己相関からは逃れられていない。今後は成長量と期首直径間の関係分析が必要となる。