| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) E1-03 (Oral presentation)

ガンコウランの温暖化処理への応答-光合成と蒸散速度はどう変化するのか-

*上原明菜(筑波大・生物学類),浜田崇(長野県環境保全研),尾関雅章(長野県環境保全研),下野綾子(筑波大・遺伝子実験センター),廣田充(筑波大・生命環境)

地球温暖化により、北半球では2012年までの30年間の気温が過去1400年において最も高温であった可能性があると報告されている(IPCC 2013)。温暖化の影響が早期に顕著化すると考えられている高山帯では 数々の温暖化処理実験が行なわれてきた。しかし、短期間のみ処理を行なった例が多かったため、本研究では長期間温暖化処理を行なった植物の応答を理解することを目的として研究を行なった。

調査は長野県木曽駒ケ岳山頂付近(2850 m)で行なった。本調査地のオープントップチャンバーは1995年に設置され、以降も継続的に維持管理されている。処理後に急速に分布拡大しているガンコウラン〈i〉Empetrum nigrum〈/i〉を対象にした。〈i〉E. nigrum〈/i〉の葉は非常に小さいため〈i〉E. nigrum〈/i〉の葉群で測定する小型の測定装置を製作した。この装置を用いて2013年8月4日の夜明け前から日没までの間、光合成と蒸散速度の測定を行なった。

光-光合成曲線を作成し比較した結果、処理区の〈i〉E. nigrum〈/i〉の方が、最大光合成速度が僅かに減少し、光利用効率は3倍(0.003 mol mol〈sup〉-1〈/sup〉)大きく、呼吸速度も約1.7倍(4.6 mmol mm〈sup〉-2 〈/sup〉 day〈sup〉-1〈/sup〉)大きいことが明らかになった。さらに葉の1日の炭素収支を推定した結果、処理区の生産効率は対照区の約1/6程度と、極めて低い効率であることが明らかになった。蒸散速度は、両者で有意な差は認められなかったものの、処理区の方が小さくなる傾向がみられた。


日本生態学会