| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-01 (Oral presentation)

間接効果のスケール依存性:大型草食獣-植物-昆虫系におけるメタ解析

*高木俊(東邦大・理),宮下直(東大・農)

キーストーン捕食者や大型草食獣による間接効果は群集に波及する影響を理解する上で重要だが、様々なプロセスで生じる間接効果の一般的な傾向は、一部の系を除いて十分には把握されていない。例えば、草食獣の採食は植物の形質変化と密度変化の2つのプロセスを介して、植物を利用する他の生物に正にも負にも影響する。また、草食獣による影響は、様々なデザインやスケールの実験で評価されており、そのことが一般的な傾向を把握しにくくしている可能性がある。本研究では、大型草食獣-植物-植食性昆虫系に着目し、応答変数の種類、実験の時空間スケール、対象とする生物の特性の3つの要因に着目して、これらが間接効果の強さや方向性に与える影響をメタ解析により評価した。

203の事例からEffect Sizeを抽出した結果、全体として草食獣は昆虫に対し負の影響を及ぼすことが示された。この傾向は応答変数に昆虫の面積あたりの密度指標を用い、1~10年、<10haのスケールで実験を行ったもので顕著に見られた。一方、単位植物量あたりの昆虫密度を用い、1年以内、植物個体レベルでの評価を行ったものでは有意な傾向は見られなかった。また、草地生態系での家畜の影響を評価したものでは昆虫に対し負の影響が、樹木を介したものでは正の影響が見られた。階層分割によってこれらの要因の独立効果を検討した結果、実験の空間スケールと介在植物のタイプが特に強く間接効果の強さや方向性に影響していた。スケール依存性の存在は、小スケールでの実験結果から、大スケールにおよぶ草食獣の影響予測が困難であることを示しており、生態系への影響を予測する上では草食獣を管理するスケールに近づけたデザインでの評価が必要であることが示唆された。


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