| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) F2-11 (Oral presentation)
長期にクローン成長を行うことでジェネットサイズが増大し、有性繁殖時に自殖由来の実生が生産されやすくなり、適応度が低下することが知られている。しかし、ジェネットが入り交じることによってこのデメリットが緩和されるのではないかと考え、ジェネット混在型構造をもつチュウゴクザサ( Sasa veitchii var. hirsuta)個体群を用い、2007年の広域同調開花時に、親世代のジェネットサイズと有性繁殖の成功に関する実証的な解析を行った。
開花した個体群内に10×10mの調査プロットを設置し、1)全2583稈の位置を記録して親世代のジェネット識別を行い、2)各稈の生産種子数を計数し、約1割の種子を花粉親解析に供した。3)2008年に発生した全ての実生の位置を記録し、両親推定用の試料を採取し、4)2009年から2012年まで、新たに発生した稈の位置を記録し、ジェネット識別用の試料(計13936稈)を採取した。遺伝解析にはSSR11遺伝子座を用いた。
プロット内には、サイズの異なる111ジェネット(1~191稈/ジェネット)が混在しており、総計約19700粒の種子が生産された。それらから1414ジェネットの実生が発生したが、翌年以降減少し、2011年には約半数になった。種子親および花粉親として生産した種子数はジェネットサイズが大きいほど多く、実生親としても大ジェネットの寄与率が高かった。しかし、実生の生存率と親世代のジェネットサイズとの関係は認められず、このことは親世代でジェネットサイズが大きいほど生産種子数が多く、定着する実生数も多いことを示している。つまり、ジェネット混在型の構造は有性繁殖時の適応度の低下を招かない可能性が示唆された。