| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(口頭発表) G2-02 (Oral presentation)
数理生態学者の用いる数学的、理論的手法は今日多岐に渡る理論を発展させてきている.力学系をはじめとしゲーム理論、数値シミュレーションなどを基軸とした個体群動態、生活史進化、集団遺伝学、疫学の理論の発展がそれである.しかし、実証研究のデータ解析と手法を共有した理論的枠組みを持つものは多くはない.その中でも推移行列モデル、偏微分方程式モデル、積分写像モデルは成功している部類に入るであろう.これらの模型をその数学的構造から線形人口模型と呼ぶ事にする.線形人口型は―例えばある種の集団に着目した時に―その種の生活史パラメータの推移から個体群動態の漸近挙動を予測する模型である.近年、これら線形人口模型の研究は環境の不確実性を考慮した研究が盛んである.なぜならその不確実性は個体群の漸近挙動に影響を与えることが分かってきたからである.また、この不確実性には二種類ある事が筆者の研究で明らかになった.それら、所謂環境変動のような集団レベルにはたらくものを外的不確実性、生活史のゆらぎからくる個体レベルのものを内的不確実性と呼ぶ.これらの違いを自然界の中で見分ける事は困難であるが、定式化の枠組みは大きく異なる.前者は非自律系の写像で書かれるが後者は自律系である.また前者は多くの知見が得られているが後者はそうではない.
そこで本研究では内的不確実性に着目した生活史進化の解析を行うために確率解析の手法を導入した、その一つが確率制御理論である.この理論により生活史進化と個体群動態が内的不確実性のもとでどのように結びつくかを紹介したい.