| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) G2-06 (Oral presentation)

植物-植食者-捕食者の共進化に基づく信号システムの進化に関する理論モデル

*山内淳 (京大・生態研センター), Maurice Sabelis (Univ. of Amsterdam), Minus van Baalen (Univ. Pierre et Marie Curie), 小林豊 (明治大・先端数理), 高林純示 (京大・生態研センター), 塩尻かおり (京大・白眉センター)

植物が植食者からの食害に反応して化学物質(匂い)を放出し、それに対して特異的な捕食者が誘引される現象が広く知られる。そのような化学信号には捕食者に加えて植食者も誘引される場合があり、それが植物にとってのコストの一つとなっている。Shiojiriら(2010)はキャベツをとりまく3者系において、植物の食害応答パターンが植食者に依存することを見出した。モンシロチョウはキャベツに対して食害に比例した量の化学物質の放出を誘導する一方、コナガは食害に依存しない高いレベルの放出を誘導する。低食害でも強い信号を示す後者の例を、Shiojiriらはイソップ童話になぞらえ「cry wolf的信号」と呼んだ。こうした信号系は、植物の未・低・高食害下での信号レベル、植食者、捕食者それぞれの信号への感受性の共進化の結果であろう。そこで、モンシロチョウ的な「正直な信号」とコナガ的な「cry wolf的信号」が生じる条件を理論モデルにより解析した。多種の多形質の共進化を扱うこのモデルは複雑で解析的な結果を得ることは難しいが、特定のパラメータセットを中心に進化平衡状態を数値的に調べ進化のパラメータ依存性を調べた。その結果、「cry wolf的信号」が比較的起きやすい現象であること、いくつかのパラメータの変化により「正直な信号」から「cry wolf的信号」までが連続的に現れることが示された。本モデルはモンシロチョウでの相互作用の特性を十分には再現していないが、3種系での信号の進化に関する基礎的な知見を提供するものである。


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