| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-06 (Oral presentation)

過去の四半世紀における二酸化炭素濃度増加に伴う作物収量増加量の推定

櫻井玄 (農環研), 飯泉仁之直 (農環研), 横沢正幸 (静大)

陸域生態系において、農地の面積は大きな割合を占め、大気環境とのフィードバックにおいて大きな役割を果たす。従って、気候変化に対して作物バイオマスがどのように反応し、農地の純生態系生産がどのように変化するのかを精緻に明らかにすることは重要である。また、世界の人口と飢餓人口は益々増加の一途をたどっており、気候変化に伴いどのように作物生産性が変化するのかを明らかにすることは、世界の食料安全保証上極めて重要な課題である。

これまでに国スケールの統計データと全球の気象データを用いて、過去における平均気温・降水量変化と収量の関係を統計的に解析した研究などは数多くある。しかし、そのような解析では気温や降水量以外の要素を扱うことは難しい。例えば、大気中二酸化炭素濃度が増加することの影響として植物の光合成の活性が高まることが分かっているが、二酸化炭素濃度の増加の影響を、全球で、統計的手法によって明らかにするのは大変難しい。一方で、プロセスベースの作物成長モデルを使った解析も全球では問題がある。なぜなら、それらは圃場スケールで開発された物であり、それを全球に拡張しようとすると、パラメータの不確実性が増し、精緻な推定ができなくなるためである。 

我々は、この問題を解決するために、プロセスベースの作物成長モデルを全球の作物収量統計データでベイズ的にデータ同化することによって、二酸化炭素濃度に対する反応と全球の作物栽培多様性を担保した上で、各気象要素の作物への影響を精緻に予測するモデルシステムを開発した。本システムは、ダイズ、コメ、トウモロコシ及びコムギにおいて、全球における作物生産性を予測することができる。本発表では、このシステムを用いて、過去の二酸化炭素濃度の増大が過去の作物の収量にどの程度影響を与えたのかを主要作物について、全球で解析した結果を報告する。


日本生態学会