| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H1-07 (Oral presentation)

知床羅臼岳における標高傾度に伴う外生菌根菌群集の変化

*松岡俊将(京大・生態研セ),北川涼,小出大(横浜国大),塩野貴之(琉球大),保原達(酪農大),川口恵里(京大・理),森章(横国大),水町衣里(京都大・iCeMS),大園享司(京大・生態研セ)

標高傾度に伴う生物群集の変化には環境の変化や空間性といった複数の要因の寄与が考えられる。しかし、どういった要因がどのくらい寄与しているのかを定量的に検討した研究例は、微生物群集において限られている。外生菌根菌は、カバノキ科、ブナ科、マツ科など森林で優占的な樹木の根に感染し、宿主植物と相利共生的な養分交換を行う真菌類の機能群である。本研究では、標高傾度に伴う外生菌根菌群集の変化と、群集組成の変化における宿主群集、土壌・地形環境要因、空間性のそれぞれの寄与を調査することを目的とした。

知床半島羅臼岳の標高200mから1200mの6標高クラスにおいて、それぞれ10個の土壌ブロックを採集し、外生菌根を取りだした。メタゲノミクスにより各ブロック菌根中の菌類rDNA(ITS1領域)の塩基配列を決定し、操作的分類群(OTU)を作成した。各OTUについて、データベースの配列との比較から属する分類群を求め、外生菌根菌OTUを抜き出した。

外生菌根菌は19科25属に含まれる136 OTUが得られた。OTU数の多い科はイボタケ科、ベニタケ科、フウセンタケ科であった。全外生菌根菌OTU数は、標高傾度に伴う変化は見られず、斜面傾度による負の影響が有意な効果として検出された。一方、OTU組成は、標高傾度に伴う変化が見られた。RDAの結果、OTU組成の変化における宿主、環境、空間それぞれの説明力はいずれも15%前後であった。Variation partitioningの結果、3要因合計の説明力は約25%、空間のみでは約4%ほどであったことから、本調査地ではOTU組成の少なくとも20%程が宿主・環境(決定論的プロセス)により説明可能であることが明らかになった。


日本生態学会