| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-08 (Oral presentation)

外来ニジマスの柔軟な生息地利用ー性・サイズ特異的な季節移動

*金澤友紀代, 山﨑千登勢, 田中友樹, 高屋浩介 (北大・環境科学院), 小泉逸郎 (北大・創成)

導入された外来種のうち、定着できるのは少数である。定着成功に影響する要因として、季節移動があげられる。季節移動を行う生物は、適切なタイミングで異なる生息地に移動する必要があるため、定住性の種よりも導入地域に定着しづらいことが予想される。ニジマスは北米太平洋岸・カムチャツカ原産の魚類であり、多様な回遊パターンを持っている。海で成長し産卵の際に河川へ戻る個体は降海型と呼ばれる。一方、河川内で季節移動を行う個体は河川回遊型、行わない個体は残留型と呼ばれる。ニジマスは世界各地で侵略的外来種となっているが、導入地域の回遊パターンはほとんど知られておらず、特に河川回遊型と残留型のどちらが定着しているかは全く知られていない。そこで本研究では、外来ニジマスの回遊パターンが定着成功に与える影響について検討した。

調査は北海道音更川の12支流で行った。ニジマスが支流―本流間を季節移動するかどうかを明らかにするため、魚類の遡上を妨げる堰堤の上流部13地点、下流部10地点において夏期と冬期に捕獲調査を行い、捕獲した個体の尾叉長・性別を記録した。

調査の結果、4支流の堰堤の下流部において捕獲個体数が冬期のみ大幅に増加した。堰堤の上流部ではニジマスの生息が6地点で確認され、そのうち3地点には稚魚や成熟雌が生息していた。

これらの結果は、堰堤の下流部には支流―本流を季節移動する河川回遊型が、上流部には一生を支流で過ごす残留型がいることを示している。河川回遊型は越冬に適した生息地へ移動することで死亡リスクを減らす一方、残留型は生息地の分断化に伴い回遊パターンを変化させた可能性がある。音更川流域のニジマスは、二つの回遊パターンを持つことで柔軟に定着していることが示唆された。


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