| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-10 (Oral presentation)

外来アライグマの起源解析および遺伝的集団構造の解明

*高屋浩介(北大・環境科学院),高田雄三(防衛医大・共利研),小泉逸郎(北大・創成)

外来種は世界的な生物多様性の減少の主要因である。外来種の防除のためには分子生態学的手法が有効になる。例えば、外来種の遺伝的集団構造を把握することで、導入経路を特定するために重要な起源地域を推測することができる。また、個体群の維持や定着可能性への影響が示唆される遺伝的多様性の把握も可能になる。ペットとして導入されたアライグマは生態系や農業への影響が大きく、日本の侵略的外来種ワースト100に指定されているが、遺伝的集団構造の知見は不足している。そこで、本研究では、アライグマの起源地域および遺伝的多様性に影響を与えている要因を明らかにすることを目的とした。

先行研究で解析された10地域約3000個体のミトコンドリアDNAのD-loop領域を用いた。起源を明らかにするために、日本及び原産地域のハプロタイプのネットワーク解析を行った。各地域の遺伝的多様性に影響する要因を明らかにするために、捕獲地域の人口、森林面積、分布確認年を説明変数として重回帰分析を行った。

起源解析の結果、日本のハプロタイプはアメリカ東部の3系統のうち2系統に含まれた。先行研究におけるヨーロッパの侵入個体群も同じ系統に含まれることが知られており、同一起源地域からの導入があった可能性がある。重回帰分析の結果、市町村人口とハプロタイプ数に有意な傾向がみられ、人口が多い地域ほど検出されるハプロタイプ数が多かった。人口の集中する都市部などの地域は、外来種が導入されやすいだけでなく、遺伝的多様性を増加させる可能性がある。一部の外来種では、異なる起源の個体群が混合されることで侵略性が高くなることも示唆されている。ペットに由来する外来種では、都市部が遺伝的な混合のホットスポットになるかもしれない。


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