| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-003 (Poster presentation)
ブナは通常、土壌の厚い安定した斜面で優占するが、多雪地では渓畔域においてもブナが優占している場合がある。しかし渓畔域において、ブナがどのように定着、成長しているのか、また渓畔域はブナにとって生育に適したハビタットであるかは不明である。そこで本研究では、日本有数の多雪地域である福島県只見において、渓畔域と斜面のブナの個体群構造、成長速度、繁殖特性の比較を行った。
2箇所の渓流を対象とし、各渓流の渓畔域に1箇所、斜面に2箇所ずつプロット(30m×30mを基準)を設置した。またプロット以外の渓畔域に分布するブナ林冠木も調査対象とした。プロット内の樹木の樹種名、DBHを記録するとともに、ブナについては樹高の測定、繁殖の有無の確認を行った。また林冠に達した樹木を対象に成長錐を用いて年輪コアを採取した。渓畔域と斜面のブナの成長速度を比較するため、過去30年間の直径の相対成長速度(RGR)を算出し、共分散分析により検定した。
ブナは渓畔域、斜面ともに最も断面積の大きい優占種であった。直径階分布では、ほとんどのプロットで、ブナは小さなサイズから大きなサイズまで個体が見られた。また渓畔域でも多くのブナが繁殖を行っており、概ね林冠層に達した個体が繁殖を行っていた。渓畔域のブナの相対成長速度は斜面と大きな差は見られず、良好な成長を行っていた。
以上の結果から、多雪地の渓畔域は撹乱の影響が特に大きい場所を除いてブナの生育に適したハビタットであると考えられる。ブナの生育が良好な理由として、開放的な流路に隣接しており光環境が良いことや、ブナより成長速度の速い先駆種が多雪地では少ないことが考えられた。