| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-005 (Poster presentation)
我が国において、暖温帯(常緑広葉樹林帯)と冷温帯(落葉広葉樹林帯)の境界はWI=85.0℃・月付近にあるとされるが、これよりも温暖な場所に、冷温帯に分布する落葉広葉樹や針葉樹が隔離的に分布することがある。これは最終氷期以降の気候変化の中での遺存分布と解釈されることが多いが、分布に関わる気候や地質、地形などの環境条件や分布の地理的広がりなどが具体的に調べられた例は少ない。常緑広葉樹との競争関係を考慮するならば、分布地における林冠や地表面のかく乱体制も、分布規定要因として重要であろうと推定されるが、この点についてもよくわかっていない。本研究では、暖温帯に属するにもかかわらず温帯性樹木の遺存分布が見られる千葉県清澄山を調査地として、温帯性樹木の分布と生育状況に関する調査を行い、さらに、冷温帯域が主体をなす(暖温帯~寒温帯域が含まれる)栃木県との間で、種ごとに分布地の気候条件を比較することで、遺存分布に関わる環境要因と生物的要因について考察する。清澄山においては、東京大学千葉演習林の保護樹データを活用して分布地点の気候条件等を推定するとともに、保護樹個体周辺の植生に関する調査を行った。この調査は隣接個体法(大場1984,菅原1985)を樹木の毎木調査向けに改良した方法で行い、対象個体の上方、側方、下方に隣接して生育する樹木をサイズと共に記録した。栃木県内の植物分布については、栃木県立博物館の標本データを使用した。採取地点の標高と標準メッシュコードが明らかなデータから、各種の分布域の気候条件を推定した。調査と解析はまだ緒についたところであるが、今回はその結果を予報的に紹介する。