| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-008 (Poster presentation)
群集の構成種が互いに系統的に近い(phylogenetic clustering)か遠いか(phylogenetic over-dispersion)を知ることは、種組成を決定しているメカニズムの解明に役立つ。もし「系統的保守性」(近縁種ほど機能やニッチが類似している現象)が成り立つなら、近縁種からなる群集には機能・ニッチの類似した種が多く含まれることになり、種組成は「環境の篩」で決まっていると考えられる。しかし、「系統的保守性」は常に成り立つとは限らない。
本研究では、ボルネオ島熱帯雨林の大面積調査区に生育する643樹種を対象に、個体群動態特性(最大直径、直径成長、死亡率、更新率)とハビタット特性の「系統的保守性」を検討した。Phylocomを使って系統樹を作成し、10年分の毎木データから各種の個体群動態特性とハビタット特性を計算した。BlombergのKを用いて系統保守性を解析した結果、動態特性では有意な系統的保守性が認められたが、ハビタット特性では系統的保守性は認められなかった。また、調査区を50m四方の方形区200個に分割してNearest Relative Index(NRI)を計算したところ、70%の方形区で正の値となり局所群集の多くが系統的に遠い種から構成されていることがわかった。これらの結果は、「環境の篩」が局所群集の種組成決定に重要だが、ハビタット特性に「系統的保守性」が見られないため、局所群集は様々な系統の種を含む系統多様性の高い種組成になっていることを示唆する。