| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-009 (Poster presentation)

冷温帯林におけるブナの衰退と立地環境

*山崎理正, 鮫島悠甫, 金子隆之, 高柳敦(京大院・農), 安藤信(京大フィールド研)

京都大学芦生研究林のモンドリ谷に設置した16haの固定プロット調査から、冷温帯林におけるブナの衰退が明らかになってきた。調査地ではシカの過採食により下層植生が衰退し、土壌流出の傾向が見られる。このような変化がブナの衰退に影響を及ぼしているのであれば、急傾斜地で枯死確率が上がっている可能性がある。本研究ではブナ衰退の要因として立地環境と立木密度に注目し、固定プロットの全域と一部を対象に異なるスケールで解析を行った。まず16ha全域を256個に分割する25m四方のサブプロット単位で、プロット境界の測量データから地形要素(標高・斜面傾度・斜面方位・凹凸指数)を算出した。これらとサブプロット単位の立木密度を説明変数とし、1992年から20年間のブナの枯死確率をサブプロット単位で予測するモデルを構築し、モデル選択を行った。次に固定プロットの一部(1.5ha)を対象に、立木と枯死幹の位置と標高をDGPSとレーザ距離計を用いて測量した。この測量データから計算した地形要素と立木密度及び個体の胸高直径を説明変数とし、1992年から5年毎のブナの枯死確率を個体レベルで予測するモデルを構築し、モデル選択を行った。

サブプロット単位の解析では、検討した地形要素と立木密度はいずれもブナの枯死確率を予測する最適モデルに説明変数として採択されず、ブナの枯死に影響を及ぼしている要因を明らかにすることはできなかった。一方個体レベルの解析では、立木密度と個体の胸高直径が最適モデルに説明変数として採択され、胸高直径が太くなり周辺の立木密度が高くなるほどブナの枯死確率が上がっていることが明らかとなった。地形要素は説明変数として採択されず、下層植生の衰退がブナの衰退に及ぼす間接的な効果は検出されなかった。


日本生態学会