| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-013 (Poster presentation)
東日本大震災(2011年3月11日)による大津波から3シーズンが経過し,環境攪乱の影響を強く受けた沿岸地域の植生は,当初の状態から大きく変化したことが予想される。特に海水が浸入し,長期間にわたって残留した地域では残留塩分は減少していることから,生育する植物も本来のものに置き換わった可能性が高い。そこで,岩手県沿岸の植生を明らかにする研究の一つとして,大津波が到達した地域で植生動態を調査した。ここでは大津波発生後の2年目(2012年7~8月)と3年目(2013年8~10月)の植生状況を比較した。
調査は岩手県宮古市の赤前地区(水田耕作地)と鍬ケ崎地区(市街地)の2ヵ所で,草本群落を対象に20~25の方形区(2×2mを基準)をランダムに設置し,出現種とその優占度などを記録した。
鍬ケ崎地区では優占種が植分によって異なるが,全体としてシロザ,ハキダメギク,オランダミミナグサなどの短命性の雑草が減少し,多年生雑草が増加した。在来種が減少したことで帰化率は増加した。赤前地区の水田では大津波前の耕作管理状況,海水の浸入量,堆砂量,地表の凹凸による乾湿の差異で,ハマアカザ群落,コガマ群落,ヨシ群落,ヨモギ群落などが発達していた。これらではハマアカザ,ハマツメクサなどの短命の塩生植物がほぼ消失し,ヒメジョオン,ブタクサ,オオバコなども減少した。また,全体として出現種数が減少し,セイタカアワダチソウやヨシなどの大型多年草の出現頻度,優占度が増加した。
これらの結果から,大津波による攪乱1年後に成立した多様な植物群落ではその1年後,短命性の植物が大きく減少あるいは消失し,一部で多年生雑草の増加が起こった。総じて,種多様性は減少し,特定の植物が優占度を増すことで多様な植物群落は画一化されつつことがわかった。