| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-014 (Poster presentation)

河川の水生植物群落の成立機構:時空間スケールの違いに着目して

*山ノ内崇志, 石川愼吾(高知大・院)

河川での水生植物群落の成立には,1)環境要因との関連性,2)現存量の増加と流失とのバランス,3)河川間での種組成の違いが影響するとされている.しかし,これらの相互作用を含む群落の成立機構の全貌は明らかにされていない.

演者らは河川の水生植物群落について6つの事例研究を行い,それぞれにおいて異なる成立機構が働いている可能性を見出した.それらを統一的に説明することを目的として,上述の3つの視点を統合した概念モデルを考案した.モデルは以下の3つの部分からなる:1)水平面については,水生植物の生産性や生存に影響する水温,光,炭素源,栄養塩,流速,底質などの複合された環境要因を面として表している,2)垂直方向の軸は,裸地状態にはじまり,立地全体を単一種が覆い優占するまでの経時的な現存量の変化を示す,3)種プールは,対象とする地点に供給されうる種の組成を表す.それぞれの種は,平面上における生育可能な領域,すなわち基本ニッチを持つ.実在するある群落をモデル内に位置づける場合,環境要因から水平面上の位置が,植生の発達状況から垂直軸上の位置が定められる.また,経時的に起こる諸現象は,水平面と垂直軸からなる空間内での位置の移動として解釈される.例えば,増水時の攪乱プロセスは,短時間に起こる流速,底質の安定性などの急激な変化として,また,フェノロジーや刈取りなどによる植生の発達状況の変化は,縦軸上の位置の変化として解釈される.

6つの事例研究と概念モデルから,種の分布または群落の種組成と環境要因との関連性が検出できるのはごく限られた条件下のみであり,しかも,それらの関連性は種プールの組成に影響されうることが予想された.発表では,モデルや予想の妥当性,保全活動などへの応用の可能性について議論したい.


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