| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-017 (Poster presentation)
展葉時期や落葉時期の早まり・遅れといった葉群フェノロジーの変化は、着葉期間の延長・短縮を通じて陸域生態系における熱・水・炭素収支に影響を与える可能性がある。したがって葉群フェノロジーの変動性の解明は将来の気候変化が生態系機能に与える影響を評価するための重要な課題の一つである。近年、デジタルカメラによる定点撮影画像の解析が葉群フェノロジーの詳細な時間的変化の検出に有効であることが示されてきた。これらの既存研究の多くは林冠全体の平均的な葉群フェノロジー変化を観測対象としているが、環境変動に対する植物の応答は樹種によって異なり、それが植生スケールでの応答性に影響することが予想される。そこで本研究では、森林生態系の長期炭素収支観測サイトである冷温帯落葉広葉樹林「高山サイト」において、デジタルカメラによる林冠表面の自動定点撮影を2004年から2013年にかけて実施し、撮影画像の解析(目視及びRGB解析)により、林冠を構成するミズナラ、ダケカンバ、ウリハダカエデ、ミヤマザクラの展葉開始日と落葉終了日の年々変化を評価した。
その結果、どの樹種とも展葉開始日の年変動は同様だったが、落葉終了日の年ごとの変動は樹種間で異なる様子が見られた。また、展葉開始日を検出する際のRGB指標(GEI:Green excess index)の最適閾値はどの樹種ともほぼ同様(30~35)であったが、落葉終了日を検出する際のGEI値の最適閾値には樹種によって幅が見られた(-10~25)。以上の結果を基に、葉群フェノロジー観測に対するカメラ観測手法の有用性と今後の課題点を議論する。