| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-021 (Poster presentation)

日本全国の森林樹木の展葉フェノロジーの予測可能性

*長田典之, 日浦勉(北海道大FSC)

春における植物の展葉時期は、植物個体の生産性に大きく影響する。このため、展葉時期の種間差は、生産性の種間差に直結する要因であると考えられる。日本全国に生育する樹木の展葉時期を明らかにすることは、今後の温暖化が展葉時期に与える影響の種間差を理解する上で不可欠である。全国各地において、様々な樹種の展葉時期についての情報が数多く蓄積されつつあるが,そのほとんどは特定の調査地における個別研究にとどまっている。発表者らは、既存の文献データを整理することにより、全国レベルでの森林樹木の展葉時期(開芽日)のパターンを明らかにした。さらに樹木の形質データと展葉時期の関係を整理することにより、フェノロジー調査を行っていない種について展葉時期を予測できる可能性について検討した。

本研究では全国の50サイトにおける落葉広葉樹187種(1349種×サイト×年)と常緑広葉樹42種(270種×サイト×年)のデータを整理した(発表時にはさらに増える予定)。既存の研究では同一サイトにおいて個葉面積や道管径が大きい種ほど展葉時期が遅い傾向が見られることから(小見山1991; Wang et al. 1992; 長田 未発表データなど)、種の形質データとして個葉面積と道管径について文献値を整理し、これらの形質と展葉時期との関係を調べた。

この結果、同一サイトでは落葉広葉樹のほうが常緑広葉樹よりも展葉時期が早い傾向が見られた。また、落葉広葉樹では調査地の年平均気温と道管径によって種の展葉時期が予測可能であり、道管径が小さい種ほど同一サイトにおいて展葉時期が早い傾向が見られた。一方、常緑広葉樹では道管径と展葉時期の間には明瞭な傾向は見られなかった。発表ではさらに文献による調査法の違いなども考慮して展葉時期の予測式を求めることにより、展葉時期の定量的な予測可能性について論じる。


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