| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-023 (Poster presentation)
温暖湿潤で森林が発達する日本列島にあって,海岸砂丘は自然草原が維持されるユニークな生態環境である。海浜草原は,陸域と水域を結ぶ重要な生態系であるが,人為的な「白砂青松」化により全国的に希少となっている。本研究では海岸砂丘の土地利用について,60年にわたりその変化が記録されてきた鳥取砂丘と,津波により海岸林が破壊された福島県相馬市松川浦を対象に,海浜草原と砂丘幅の関係について検討した。
鳥取砂丘の調査地では,砂丘幅1km以上の砂丘地,西隣で砂丘幅400m程度の鳥取大学乾燥地研究センター砂丘,東隣の砂丘幅50m程度の福部海岸で植生調査を行い,海浜草原の種組成・構造と砂丘幅との関係を解析した。東日本大震災で海岸林が破壊されて3年目となる福島県相馬市松川浦では,砂丘幅が250m以上,100m程度,50m未満と異なる3カ所で植生調査を行い,同様に構造の解析を行った。
その結果,鳥取砂丘,松川浦ともに最も狭い砂丘幅でも,海浜草原を構成する主要種がある程度出現していることが明らかとなった。しかし空間構造は砂丘幅によって大きく異なっており,狭い砂丘地では広い砂丘地よりも分布が圧縮あるいは消失する傾向があった。大震災の被災地では海岸林の元通りの復旧あるいは,もしくはより強靱な海岸林の育成が急がれているが,いち早く再生した海浜砂丘の生物多様性を維持し,本来の生態系サービス機能を発揮させるには,一定規模の砂丘幅を確保することが望ましいと考えられる。