| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-024 (Poster presentation)
国内でも有数の穀倉地帯である宮城県仙台平野では,2011年3月11日東日本大震災の津波により多くの農地が被害を受けた。津波による直接的な農地植生への被害だけでなく,復旧作業にともなう頻繁な撹乱状況が続いている。地震による地盤沈下や津波による水路等の破損により冠水状態が続いた農地も多く,ヨシやガマが優占する湿性植生の発達や,被災以前の農地管理環境下では少なかったミズアオイやヒメシロアサザといった稀少種の出現が確認されている。一般的に,多くの農地植生は耕起や耕種体系といった継続した小規模な人為撹乱環境下ある生態系と定義される。農地植生の遷移の速度や方向性は,耕種体系や農地管理の規模や頻度に応じて決定し,一年生草本群落間,もしくは,一年生草本多年生草本群落間の間で優占種の推移変動が起こる。しかし,被災後の復旧作業は,重機による頻繁な撹乱や表土の除去や客土など大規模な撹乱が継続して行われる。このような大規模な復旧作業は,外来種の移入や地域フロラの単純化を引き起こすことが懸念される。地震や津波被害が農地生態系に与える影響についてこれまでに知見はない。被災後の植物群落の構造や種組成は,地震や津波による撹乱が,農地生態系におよぼす影響を評価するための重要な生物的指標となる。本研究では,宮城県名取市の津波被災農地において,沿岸部から内陸にむけ約4kmにわたり被災程度や復旧過程のことなる圃場を対象に,被災後2012年から2013年にわたり植生調査を行ってきた。内陸部より復旧作業が進む過程において植生の変化を明らかにし,復旧作業が農地植生の回復に与える影響について検証する。