| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-026 (Poster presentation)
地球温暖化によって、日本の高山帯においても種々の影響が懸念されている。日本の高山帯で優占するハイマツについては、成長の加速や、他の群落に与える種々の影響が予測されるものの、解析例は限られている。知床半島中央部、羅臼岳から硫黄山につながる登山ルートの中部において、植生保護のための登山道付け替え工事に際して伐採されたハイマツ25個体の基部より幹円盤を採取し、年輪年代学的手法を用いて過去約100年間での直径成長に気候が与える影響を解析した。
採取した幹円盤は冷暗所で保管したのちに、電動カンナ等を用いて年輪を判別しやすく処理した。その後、圧縮アテ材の出やすい幹の湾曲下方を避けて2方向を設定し、実体顕微鏡下で観察しつつ、デジタル出力ユニットの付属した微動ステージ上で0.01mm精度で年輪幅を計測した。1個体内での方向によるずれや、誤判読等による個体間のずれ等を補正するために、標準的な照合ソフトであるCOFECHAを用いて照合した結果、16個体で正しく暦年と対比することができた。これらそれぞれに対して、ARSTANを用いて10年で50%の変動を除去するフィルタ長の3次平滑化スプライン曲線をあてはめ、加齢に伴う成長傾向や群落内部での個体間競争等による年輪幅の変動を除去して指数化した。さらに、それらの年輪幅指数を平均化して標準年輪幅指数系列(RWC)とし、近傍の網走管区気象台で1895年より観測されている気象条件との関連性を検討した。
年輪のサンプル数が10を確保できる1929年以降に関して、当年と前年の月平均気温および月降水量と、RWCとの単相関を解析した。気温では当年の5月の気温が有意な正の相関をもっていた。また降水量では前年の9月が正の、また前年の12月が負の相関をもっていた。このほか、積雪深等との解析結果も加えて、この地のハイマツの年輪成長に気候条件が与えてきた影響を考察する。