| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-030 (Poster presentation)
照葉樹林は、古くから耕作地や薪炭林、植林地として人為の強い影響を受けており、原生状態で大規模に残っている森林は少なく小面積のものが点在しているだけである。そのため、成熟した照葉樹林の個体群動態に関する長期間の研究は少なく、照葉樹林の構造や動態に関する知見は十分ではない。
宮崎県綾町の綾北川上流には、人間の影響が少ない成熟した照葉樹林が広がっている。そのエリア内に綾リサーチサイトは位置し、4haの固定試験地を設けて、1989年から1997年までは隔年で、1997年以降は4年に一度の間隔で、胸高直径5cm以上の幹を対象に、個体群センサスを継続している。また、DBH5cm以下の稚樹についても、10mメッシュの交点に4m×4mの調査枠を設置し、1994年から2004年までは隔年で、2004年以降は4年に1回の頻度でセンサスを行っている。
綾リサーチサイトでは、1993年の台風13号によって、多くの樹木が倒れ、林冠ギャップが形成された。本発表では、台風攪乱によって形成された林冠ギャップおよび階層構造の変化に着目し、照葉樹林の林分構造の変化を明らかにすることを目的とした。
2009年時点の胸高直径5cm以上の成木の幹密度は1318本・ha-1、胸高断面積合計は51m2・ha-1であった。20年間の変化をみると、1993年の台風の後に幹本数、胸高断面積ともに減少し、その後、徐々に回復しつつある。胸高断面積合計は、台風後にタブノキやアカガシは回復せずに減少傾向にあるが、イスノキは回復傾向にあり林分での優占度が増していた。これらの結果に稚樹の動態、階層構造の変化を併せて、地空間的な林分構造の変化について議論する。