| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-031 (Poster presentation)
気候変動に伴い各種の分布標高域が上昇することが予測されるため、標高傾度に沿った群集集合規則の変化は、気候変動の影響評価の観点からも関心が高い。森林群集を対象とする場合、機能形質、系統の多様性パターンから群集集合規則を読み取る手法が多く用いられている。これらは、実際の群集とランダムであった場合と比較することで、群集集合規則を予測し、ランダムな群集に比べて多様性が高い場合は、競争排除等の種間相互作用がもたらす類似制限が、多様性が低い場合は環境フィルタリングが群集を規定しているとされる。しかし、これらの指標を単独で用いた場合、群集集合に影響する機能的形質が系統的に保存されない、などの理由によって集合規則が検出されない可能性が指摘されている。そこで、近年では、機能多様性 (FD)と系統多様性 (PD)を統合した多様性指標 (MFPD) が提案されている。本研究ではこのMFPD、FD、PDを用いて標高傾度の草本と樹木群集の集合規則を明らかにすることを目的として、知床半島羅臼岳登山道沿いに設置された計70の方形区を対象に解析を行った。解析の結果、樹木はMFPD、FD、PDが標高とともに減少したため、高標高で環境フィルタリングの効果を受け、フィルタリングを受ける形質は系統的に保存されることが明らかになった。一方、草本のFDは樹木と同様に標高沿って減少したが、PDは増加し、MFPDは相関が見られなかった。この結果は草本も高標高においては環境フィルタリングの効果を強く受けるが、フィルタリングを受ける形質は系統的に保存されていないことを示す。したがって、世代時間の長い樹木は環境フィルタタリングが進化プロセスを通し多様な形質に対して働くが、草本は個々の形質に対してフィルタリングが働くため、収斂進化のパターンを示したと考えられる。