| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-051 (Poster presentation)
植物の成長速度を決定する主な要因として、光合成産物のソースである葉の形態的・生理的特性 (ソース葉の性質) と、光合成産物のシンクでもある新しい葉と貯蔵・繁殖器官への投資の割合や切り替えのタイミング (貯蔵器官のシンク活性) がある。一般に、貯蔵シンク活性が低いとソース葉の量が多くなり、活性が高いと葉の量が少なくなる。一方で、貯蔵シンク活性が低いと葉に糖が蓄積し、光合成のダウンレギュレーションを引き起こすことも知られている。このように、シンクソースバランスは個体レベルの成長に大きな影響を与えると考えられるが、貯蔵シンク活性の調節メカニズムや、葉に蓄積した糖が光合成特性や形態的特性に与える影響には不明な点が多い。
そこで、貯蔵器官のシンク活性の異なるダイコン2品種を接ぎ木することで、シンクソースバランスの変化がソース葉の形態・生理的特性や、個体レベルの物質分配や成長速度に与える影響を評価した。材料として胚軸のシンク活性が高いコメットと、活性が低い葉大根を用い、地上部/地下部の組み合わせで、コメット/コメット、葉大根/コメット、コメット/葉大根、葉大根/葉大根の4通りの接ぎ木を行った。オーソドックスな成長解析に加え、ソース葉の可溶性の糖やデンプン量、光合成速度、ルビスコ含量、ルビスコ活性化率の測定を行った。
これらの実験から、胚軸の肥大は胚軸自身が自律的に制御していること、貯蔵シンク活性によって葉に蓄積する糖の量が変化すること、ダイコンでは糖の蓄積による明確な光合成のダウンレギュレーションは観察されなかったこと、糖の蓄積による葉の密度の増加すること、などがわかった。CO2や栄養条件を変化させた接ぎ木実験の結果と合わせて、シンクソースバランスとCNバランスに応じた個体レベルの成長の制御ついて議論する。