| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-052 (Poster presentation)
落葉樹が優占する温帯落葉-常緑混交林では、上層木の展葉や落葉によって林内の光条件が大きく変化する。この群落内の光環境の時間変化は、下層植生の光合成活動にも影響を与えることが予想される。よって本研究では、上層から下層にかけて構成する計6主要樹種において個葉レベルの光合成パラメータの測定を季節を通して行い検証を行った。その結果、光合成能力の指標のひとつであるVcmax25(25℃でのカルボキシル化反応の最大速度)に関しては、上層落葉樹では展葉後に最大となりその後徐々に減少した。また、その間単位面積当たりの葉内窒素含量(Na)と高い相関を示した。一方、中・下層常緑樹のVcmax25はまったく異なる季節変化を示し、上層木の成長期に最も低く、上層木の葉面積指数(LAI)の減少傾向に伴い徐々に増加し冬期に最大を示した。中・下層常緑樹のNaに関しても夏期より冬期の方が大きかった。光合成窒素利用効率(PNUE)の最大時期は、上層落葉樹はその展葉後(5月)、中・下層常緑樹は上層木展葉前(3月)とそれぞれ異なっていた。この群落上層-下層における炭素固定最適時期のずれは、落葉樹優占林の特徴的なCO2ソース・シンクの時空間変化を導くと考えられ、これらは群落炭素収支の季節変化に影響を与えることが予想された。