| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-055 (Poster presentation)

ボルネオ島の熱帯多雨林を構成する多様な樹木の蒸散量

*齋藤隆実,熊谷朝臣,高橋厚裕,浜田修子,小林菜花子,藤井新次郎,(名大・地球水循環セ),Lip Khoon Kho(Malaysian Palm Oil Board)

熱帯多雨林からの蒸発散は地域の水循環に大きく影響している。マレーシア・ボルネオ島のランビル山国立公園ではフラックス観測によって林分蒸発散量が定量されてきた。しかし、フラックス観測の結果は林分蒸発散量の要素に分別することができず、また観測の範囲も安定していない。したがって、林分蒸散量に対して、林分を構成するそれぞれの樹木の寄与度は明らかでない。熱帯多雨林は多様な種とサイズの樹木から構成されている。本研究では、林分蒸散量が少数の突出木に由来するのか、あるいは多数の小径木に由来するのかという問題提起をした。通年にわたって林分蒸散量を定量し、樹木の特徴と関連づけることを目的とした。

調査は林冠クレーン下の4 ha調査地区内で行った。調査地区内に約13 m四方のプロットを3カ所設定した。気象観測と併せて、各プロット内の3カ所に土壌水分計を3深度で埋設し、体積含水率とマトリクスポテンシャルを計測している。胸高直径(DBH)10 cm以上の樹木について、2012年8月からグラニエ法による樹液流計測を開始した。とくに、幹断面の放射方向の変動を明らかにするため移動式センサーを併用している。

その結果、測定した33個体には8科27種が含まれ、ほぼ全て別種であった。DBHの範囲は10-103 cmで個体サイズも多様であった。結果は一部であるが、幹断面の最も外側の日平均の樹液流速度はDBHと関係がなかった。樹液流速度は幹断面の内側に向かうにつれて低下した。この傾向は大径木で顕著であった。考察として、大径木では幹断面の内側で心材化が進むために、外側で樹液流が大きい。また、個体蒸散量は個体サイズとの関係が強い。林分蒸散量は過半が少数の大径木による一方で、多数の小径木も相当の割合を占める。


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