| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-056 (Poster presentation)
森林では、林冠が閉鎖した後はLAI(葉面積指数)がほぼ一定となることが経験的に知られている。一方で群落バイオマスは増加しつつ、自然間引きによって個体数は減少する。このような過程でLAIはどのようにしてほぼ一定に保たれうるのだろうか?また、どの程度年変動するのだろうか?これを明らかにするため、常緑針葉樹ヒノキ( Chamaecyparis obtusa )同齢林の全個体に対して樹齢21年~40年の間に行なった非破壊的調査データを用い、解析を行なった。既報(*)より、この調査期間に約1/3の個体が自然に枯死したこと、個体の樹冠維持機構と個体の幹形の形成パターン(幹のどこを太らせるか)との間に密接な関係があったこと、がわかっている。今回さらに、調査地周辺のヒノキの伐倒調査データから導出したアロメトリーを用い、各樹齢における各個体の葉量や幹の乾重を推定した。解析の結果、個体間競争で枯死する個体は数十年をかけてゆっくりと葉量を減少させた後に枯死したため、個体の枯死が発生しても、その年の群落LAIへの影響は小さいことがわかった。また、調査地の幹バイオマスは調査期間に2倍以上増加したが、枯死する個体の幹の乾重増加速度は非常に小さかったため、個体の枯死が起こっても群落全体の幹バイオマスが減少することはなかった。これらの結果、20年にわたり幹のバイオマスが単調に増加し続ける一方で(個体枯死の発生にもかかわらず)LAIは6から7の間に保たれていた。また、LAIは比較的長い周期をもつ年変動パターンを示し、気象要因の年変動との関係は明確でなかった。前年までのLAI変動の履歴が当年のLAIに影響する要因のひとつとして重要であると推察された。(*) Sumida, Miyaura & Torii (2013) Tree Physiology 33 (1), 106-118.